2011年12月16日金曜日

『冷温停止状態宣言』はどう報道されたか:ドイツ・シュピーゲル・オンラインの場合(政府発表当日の記事)

本日の日本政府による『冷温停止状態』宣言には言葉を失いました。事態収束の肝はただひとつ、放射能発生の源である燃料を取り出し、完全に廃棄処理をすることです。燃料は今やどこにあるのか誰にもわかっていません。そして確かなのは、もともと燃料を密閉していた入れ物の中にはほとんど、もしくは全く燃料が残っていないということだけです。燃料が抜けてなくなってしまった後に残った、底に穴のあいた入れ物だけを見て、これが冷たくなっているからもう大丈夫とはこれいかに。危険物が通り過ぎて出ていってしまったので、何もなくなった場所ではもはや何事も起こりません、などというのは改めて宣言するようなことではありません。

 政府のこの、幼稚とも浅はかとも愚かとも間抜けともなんとも形容しがたい宣言を受け、政府・東電統合対策室は、事故発災後定期的に開催してきた東電福島原発事故に関する記者会見を、この日を持って打ち切ってしまいました。数少ないけれど心あるジャーナリストたちが粘り強く様々な問題を指摘し、重要な情報を引き出していた大切な機会だったのに。この事態を受け自由報道協会が主催した『福島原発事故の政府対応に関する緊急記者会見』の中で、この政府の対応を、明日以降日本のメディアがどう報道するのか、それに対して海外のメディアではどう報道されるのか注視しなければならない、との発言が出ていたのを興味深く感じ、ここにひとつ、今日ドイツの新聞に出た記事をご紹介しようと思います。拙い訳ではありますが、日本メディアの論調と比べてどうか、関心を傾けてお読みいただければ幸いです。また、間違いも多いと思いますので、ご指摘いただければ有難く存じます。

 ちなみにこの記事中では『冷温停止状態』は im Zustand der Kaltabschaltung となっています。英語に直訳するなら in the condition of cold shutdown 。また、記事の出た時間は、コメント欄の最初のものが15時28分(日本時間23時28分)となっていることから、その少し前と推測されます。

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原文はこちら

福島原発で冷温停止:東電には良し、住民にはどうでもよし
(2011年12月16日付/Cinthia Briseño 筆)

 政府の言葉によれば、壊滅的な福島第一原発が再び制御可能な状態になった。しかしドイツの原子力専門家はこう警告する:状況はいつでもまたひっくり返る可能性がある。そして住民にとっては、この原子炉冷温停止宣言は意味のないものだ。

 それは重要な告知になるはずだった。日本がこの状況をコントロールしているのだという裏付けに。そして、政府は約束を守ることができるのだということを示すはずだった。本日金曜日、首相は記者会見に臨んだ。

 喜ばしい福音を宣言するのを待ちきれないかのように、野田佳彦首相は予告より二時間早く全文を開示し、それは速報として即座に各メディアを通じて報じられた。福島第一原発は再び安定した状態になった。事故収束工程の重要な段階はその結果、予定された通り年末を待たずして達成された、そう野田首相は発表した。

 壊滅的なプラントの原子炉は「冷温停止状態になり、事態は収束した」と野田首相は、国の原子力災害対策本部の会合で述べた。日本政府はこの『冷温停止』という専門用語を、重要な節目として喧伝している。原子炉内の温度が100℃以下に下がった。その結果、原子炉圧力容器内の放射性燃料が安定した状態になり、理論的には制御不能の連鎖反応に至る可能性はもはやない。

 だが、ドイツ原子炉安全協会(GRS)の専門家は、冷温停止という概念の使い方を批判している。この言葉は通常運転時を前提にしており、事故の場合はその限りではない、とGRSの広報官はシュピーゲル・オンラインとのインタビューで解説した。「これは通常時のことを示唆しており、福島には当てはまらない」とスヴェン・ドクター氏は述べた。

 実際『冷温停止』は国際的に概念が確立している用語だが、そこには様々な定義がある。最も一般的な定義は、アメリカ原子力規制委員会(NRC)によって定められたものだとドクター氏は解説する。それによると冷温停止時には、三つの基準が満たされていなければならない。


  ・原子炉施設は稼働停止状態でなくてはならない。専門家は『臨界前』、つまり核分裂がこれ以上起こらないということに言及している。

  ・原子炉内部では圧力の上昇が支配的になってはならない。(稼働中は数十バールになる。)

  ・原子炉内部がある温度レベル、つまり100℃以下でなければならない。


 つまり福島では三つすべての基準が満たされているようだ、とGRSの専門家は言う。さもなければ、東京電力が申告した原子炉施設の放射能測定値は違ったものになっているはずだと。しかしながらまだ収束宣言はできないと言う。

 オーストリアの環境保護団体グローバル2000の原子力専門家は、原子炉内の温度は、本当ははるかに高いだろう、と以前から解説していた。「この時点で冷温停止に言及することは、意図的に嘘をつくことにほとんど等しい」とラインハルト・ウーリッヒ氏は言う。メルトダウンした燃料棒は圧力容器の底を通って溶け落ち、今やかたまりとなって格納容器の底に溜まっているかもしれない。そこでの温度は再びおよそ3000℃ほどになっているとも考えられる。

収束宣言には早すぎる

 だがGRSの専門家は、このシナリオはありえないと言う。3000℃程度の温度では、とうてい『かたまり』とは言えないだろう、燃料棒は液体になっいてるはずだからである、と。さらに100℃以上の温度になれば、再び水蒸気が原子炉上に立ちのぼり、高線量の放射能が観測されるはずだ、と。

 「手元にある温度測定結果からは、今のところは原子炉内での大規模な核分裂には至らないと言える」とGRSの報道官は言う。このような場合には、キセノン133やヨウ素131のような核分裂生成物がより多量に観測されるはずであるとのことだ。「しかしながら安定した状態は、場合によっては急速に変化する可能性もある」とドクター氏は言う。さらなる地震、新たに設置された冷却システムの電源喪失 --- 再び厳しい状況に陥るというシナリオは想像され得る。

 東京電力の技術者にとって重要な一歩となるかもしれないことは、立入禁止区域にかつて暮らしていた幾千もの人々や、今なお廃墟となった原発の周辺に生活する人々にとっては、ほとんど重要な意味を持たない。彼らは放射線に怯え、その土地からの汚染された果物、野菜、米あるいは食肉に怯えている。

 つまり、原子炉の冷温停止よりも大切なことは、さらなる放射能漏れを阻止することなのだ。それなのに、今なお放射性物質を含んだ水が、原子炉圧力容器の割れ目や穴から漏れ出ている。過去数ヶ月に渡って東京電力は、それがあまりに大量だったために、放射性物質を含んだ水を海に放出せざるを得なかったのだ。

 東京電力の工程表には、2012年に4号炉の貯蔵プールから燃料棒を運び出すことが予定されている。つまりこの原子炉は、この大事故が起こった時までに稼働停止していたのだ。それにもかかわらず、燃料棒が冷却のために貯蔵してあるプールのある、貯水槽の屋根は破壊されてしまった。つまり状況は安全には程遠い。「運び出しが本当にうまくいくなら」とドクター氏は言う。「安全という点では、はるかに重要な成功となるでしょう。」

(了)

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